法話 2020/03/16更新

春のお彼岸です

 春のお彼岸の到来を告げるように、境内の彼岸桜が満開になりました。
今年は、3月20日が春彼岸のお中日ですから、17日が彼岸の入り、23日が彼岸明けとなります。この一週間、西蓮寺のご門徒の皆様は、お寺の本堂やお墓あるいは納骨堂にお参りをされ、先立たれたご縁ある方々を偲びながら、彼岸から の喚び声(南無阿弥陀仏)に出遇うご縁をいただかれています。

 「彼岸」とはどんな教えなのでしょう。
 仏教経典として最も古いとされる『スッタニパータ』というお経があります。 『ブッダのことば』というタイトルで現代語訳が岩波文庫に収められています。 その第5章、この経典で最も古い部分と言われていますが、その章の題名は、「彼岸に至る章」です。そこでは、「覚者ブッダが説法されたように、そのように修行実践するひとは、(輪廻すなわち迷いの洪水のまっただ中なる)此岸から彼岸へと超えていくだろう」と繰り返し述べられています。つまり「彼岸」とは、悟りの世界を表しています。

 インドを旅行していると大きな河を渡ることがあります。列車やバスでも、渡りきるのに何分もかかります。その広い河の岸に立たれたブッダ釈尊が、こちら側の岸が我々の欲望にまみれた迷いの世界であり、向こうの彼方の岸こそが浄らかな悟りの世界であると示されながら、修行実践により悟りの世界すなわち彼岸に至る道を説かれたのが教えのはじまりと考えられます。

 浄土の教えでは、「法蔵という名の菩薩が、仏となり世の人々を悩みや苦しみから救いたいという願いを起こされ、国土を建立し阿弥陀仏となられた」と説かれています。『仏説無量寿経』には、「法蔵菩薩はすでに無量寿仏という仏となって、現に西方においでになる。その仏の国はここから十万億の国々を過ぎたところにあって、名を安楽という」とあります。『阿弥陀経』にも「ここから西の方へ十万億もの仏がたの国々を過ぎたところに、極楽と名付けられる世界がある。そこには阿弥陀仏と申しあげる仏がおられて、今現に教えを説いておられる」と阿弥陀仏がおられる極楽国土に対し、やはり西という方角が示されています。

 先程「お中日」という言葉を使いましたが、この日、春分の日、太陽が真西に沈みます。古来人々は、太陽が真西に沈む方向を見ながら、浄土(極楽国土、安楽国)に往生された亡き方々を偲び、また自らのいのちの行方を確かめてこられたのでしょう。

 この春は、新型コロナウイルスの感染拡大が心配されますが、桜の開花は例年より早いようです。西蓮寺の吉野桜もお彼岸中に咲き始め、皆様のお参りを歓迎してくれるでしょう。