福岡県南部や熊本県に大きな被害をもたらした今年の梅雨がようやく明け、猛暑の季節となりました。新型コロナウイルスによる感染も再び大きな波となって押し寄せており、心配な毎日が続いています。
8月を迎えるとともに、お盆が近づいてきたことを実感される方も多いのではないでしょうか。毎年8月13日から15日まで勤めています西蓮寺のお盆の法要も、今年は短時間でお勤めとご法話をすることとし、ご家族お揃いでの参詣はご遠慮いただくことと致しました。お祖父ちゃんやお祖母ちゃんはじめ孫さんまでご一家三代そろって毎年お参りいただいているご門徒の方が何組もおられますので、とても残念でなりません。
さて、「お盆」とは、「
ところが、2013年に辛嶋静志先生が「盂蘭盆」という語に新たな解釈を提示され、大きな話題となりました。辛嶋先生は、仏教学研究者の中で最もインド古代語・漢訳に精通された方だけにその説に注目が集まりました。先生の説によれば、「盂蘭」とは、サンスクリット語
そもそも、なぜ「倒懸」という意味を持つ「盂蘭盆」がこんなに盛んな仏教行事となったのでしょうか。
『仏説盂蘭盆経』というタイトルの「お経」があります。このお経がいつ成立したのかはっきりしませんが、3世紀終わりから4世紀初めにかけて経典の翻訳に従事した竺法護という方が訳したとされる古い経典の一つです。梁の武帝がAD538年に「盂蘭盆会」を勤めたことが知られていますが、中国ではこのお経が大流行します。
内容は単純で、短いお経です。
仏弟子
その日を待って、目連が供養をしたところ、僧達の力をもって、母親のみならず七代におよぶ父母が苦しみの世界より救われた。目連は、母は仏とその教えと教えを奉ずる僧達との功徳の力を身に受けることができたことを喜ぶ。仏は、「後の人々も、毎年の7月15日に親に孝を尽くす慈しみの心から生みの親を憶い、そのために盂蘭盆の法会を設け、仏ならびに僧に施し、父母が大きくなるまで養い育ててくれた恩に報いなさい」とおっしゃった。
以上が、盂蘭盆経のおおまかな内容です。目連さんが親を探したのは、育てていただいた恩に報いるため、つまり「親への孝をつくす」ことが冒頭に述べられていることから、中国で作られたお経ではないかという説があります。しかし、「恩」という言葉は、「この身に受けた恵みを知る」というインドの言葉の訳語とされていますし、親の「恩」に報いることを大切にする話は、インドの仏教説話にも出てきますので、このことをもって中国産のお経と判断するのはどうなのでしょう。インドでできた可能性をもつこのお経において、親の恩に報いることとは、親を「さとりの世界に導くこと」とだと述べられている所が重要で注目すべき点ではないでしょうか。
餓鬼の世界にいる母親を何とか救おうと、息子目連はご飯を器に盛って差し出します。お盆のことを「
さて、「倒懸」という教えをどう受け止めたらよいのでしょうか。
私たちは、本来もっとも大切にすべきことをおろそかにし、真の依りどころとならないものばかりを追い求め、それにしがみついています。そのような私の在り方を仏の教えに照らしてみると、頭が下になり足を上にして苦しんでいる姿に見えるのでしょう。その私が、教えに出遇い真実の道理に心開かれ目覚めたとき、我欲に