翻訳者・坊守 中川將子より
西蓮寺のホームページ開設をご縁に、インドの母と子の物語『シャムチアーイー』(シャムのお母さん)を掲載してまいりましたが、たくさんの方々に読んでいただき、とても有難く思います。
長くインドの人々に愛され読み続けられているこの本を、ぜひ現代の日本の皆さまにも読んでいただきたいという願いから、30数年ぶりに紹介しましたが、ご門徒の皆さまや大学時代の旧友からも楽しみに読んでいますとの声を届けていただきました。
なかでも、マラーティー語を学んでおられる東京外語大学の現役の学生さんより、掲載に対するお礼のお手紙をいただいた時は、とても有難く、すぐにお返事を書かせていただきました。1930年代に書かれたインドの物語ですが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。
掲載にあたってのあいさつに書きましたように、住職のインド留学に同行してマハーラシュトラ州プーナ(現プネー)市に滞在したのは、1年と8か月の間です。
すでにご逝去されたレッカ・ダムレ先生のもとで現地のマラーティー語を学び始め、難しいインドの文字を読めるようになるとともに、何か本を読みたくなり、いくつかの短編童話を読んでいました。
さらに何か思い出となるような本を読みたいと思っていたころ、先生だけではなくインドの友人たちが勧めてくれたのが、この『シャムチアーイー』でした。翻訳するのに大変苦労しましたが、作者サネ・グルジーの表現力の美しさに導かれ、彼のもつ慈悲あるいは嘆きの心、さらには行動を起こす力強さに感動しながら、インド滞在中に完訳することができました。
帰国後、さまざまなご縁に恵まれて、すずき出版より刊行できたことは、本当に夢のような出来事でしたが、それもサネ・グルジーが伝えようとした「愛と智慧と力」がインドのみならず、日本の人々の心にも響いた証でしょう。
実は、この『シャムチアーイー』は、全42話から構成されています。日本語に訳すと約400ページにもなりますので、出版にあたっては42話の中から25話のみを選びました。収載されなかった物語は、どれも素晴らしい内容を持つものばかりです。いつか機会があれば紹介したいと思いながら、時間ばかりが経過してしまいました。
幸いにもホームページという発表の場をいただいたこともあり、これから未発表の17のお話を少しずつご紹介していくことにいたしました。
1930年代のインドのお話ですので、内容によっては差別的な表現があったり、現在では用いられていない言葉が出てきますが、そのまま翻訳し掲載しております。この点、何卒ご了承ください。
では、本邦初訳となります『シャムチアーイー インドの母と子の物語』の17話に、もうしばらくお付き合いくださいませ。 ナマステ (2020年11月1日)